アイの物語

アイの物語

アイの物語

近所の図書館に置いてあったんで読む。

 

短編集なんですが、とらわれの人間がアンドロイドに物語を聴かされる、

というアラビアンナイト的なミステリアスな導入部と、テンポが良くて

スリリングな一本目の掴みが上手くて一気に最後まで読みました。

 

一本目の「宇宙をぼくの手の上に」は50ページという短い枚数の中でエキサイティングに

展開するドラマが実に面白かった。

劇中のSFサークルが公開しているweb連載小説が、リアルタイムで進行中の事件に

影響を与えていく話なんですが、割と苦い味を残しながらも爽やかな読後感。

 

本のタイトルのアイとは愛でありAIであり一人称の"I"であるわけですが、

実は1本目の段階でこの辺のテーマは内包されていて実に巧みな構成です。

 

山本版「接続された女」な2本目、育成対話AIゲームとの友情を描いた3本目など

いかにもオタク作家らしい話を経て、意外な「コンピューターの叛乱」を描く

6本目7本目の展開が見事。

 

最終的に明らかになる事実には、んなアホな!とは思うんだけど、その辺を

人間にTAIの虚数パラメーターiを使った概念は理解できない、という設定やら、

実に意味不明なTAI同士の会話などの力業で押し通しちゃうあたりは面白いです。