萌える男
- 作者: 本田透
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/11/07
- メディア: 新書
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ありふれたごく普通の恋愛について過剰な攻撃をする芸風を押さえ込んで書いてあって*1、まあ読みやすい。
ただ、その所為でどうも論旨が曖昧で(というかトンデモ本)、自己正当化のためにだけ書かれた自分語りでしかない。
多分電波男は「お話」として読める本なのだと思うが、いかんせん無批判にこれを支持するweb上のキモメンの反応が気持ち悪すぎて立ち読みはしてみたもののどうも購入する気になれなかったのだった
帯や巻末の既刊紹介がまた「感じない男」「さみしい男」「男の嫉妬」「もてない男」「帰ってきたもてない男」「童貞としての宮沢賢治」「女は男のどこを見ているか」等々、畳みかけてきます(笑)
で、萌える男については特に新しいことは書いてない。
電波男を立ち読みしたり、web上の感想文を読んで
『「恋愛資本主義」とやらを激しく非難してるけど、萌えグッズを収集する行為って経済活動そのものだし、2次元の女子は決して俺(てらりん)を愛してはくれないからにはやはり商売オンナと割り切ってつき合う事しか出来ないな』と思ったものですが、まあ「萌える男」でますますその思いを補強されたということ
P58、図表6で本田氏は男女が互いの恋人に対して「理想の女性」「理想の男性」を見いだそうとするが
そもそも生身の人間を神として崇めるという行為そのものに矛盾があるのだ。人間は神ではない。神に近い人間は存在するが、それは全人口のうちのごくごく一部の人間に限られる。
という理屈で生身の人間同士の恋愛が必ず破綻を迎えると説く。
その一方で本田氏はギャルゲーやアニメというウソ話から「許し」だの「妹萌え」だのという理念を教化された人間が増えてその思いを共有する事が出来れば世の中がよりよくなるだろうというP171、図表26を提示する。
いわば本書の下げとも言うべき部分で、たった2人の間でも成立不可能としたはずの理想の共有を不特定多数の人間で行っていこう、と言っている訳だ。
しかも、細分化しすぎてもはや共通言語をなかなか見いだせないオタク層に向かって。
2次元のウソ話に愛を感じる事が尊い行為ならば、生身の人間の「愛してる」「君だけしかいない」なんて「ウソ」に心をときめかせるのも同等に尊い行為なのではないのか
また、外見の悪い男を無価値なものとして切り捨てる「恋愛資本主義」を氏は非難するのだが…男だったら美人…なりかわい子ちゃん好きだべ?
そういえば本書は萌えについて語って居る割に、萌えキャラの外見がいかに愛おしいものであり、キモメンを引きつけるかについて全くと言っていいほど触れられていない。
萌えを語る上で非常に重要…てかちょっとそれ抜きには考えられないでしょ。
18禁恋愛ゲームを語る上でもハーレムルート、鬼畜ルートについてあっさりと同様の逃げを打っている。
まあこんなクドクドとした長文書かなくても、オタクは外見はキモクても心優しい素敵な
人間性をもった人ですよ、という電車男式の本田氏の主張は一言あれば覆せる
「テラワロスw」*2
本田氏の本音らしきものは冒頭の部分でほんの少しかいま見る事が出来る
どんどんたまってゆくアニメの録画やビデオゲームを消費しながら(内心キツイとおもいながらも)、web上で今流行ってる萌えをチェック。
あー、はやりの話題追っかけないとねー。
友達とアニメの話するの楽しいものね。オタクだもん。
もし、もしも本田氏が本気でフィクションに人間を癒す力があり、それはオタクだけでなく広く一般の人間に共有された時人類はより高い段階でお互いを思いやることができる*3、なんて絵空事を本に書いてる10分の1でも本気で思っているのならば、オタク向けのアジテーションやライトノベルなどという引きこもった表現のフィールド内だけで活動することは許されない。
頭の固い一般人(笑)にもフィクションの癒しが信じられる形での表現が必要になるだろう。