僕の見た空の色は君が見ている空と違うのかもしれない
なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: スーザン・A.クランシー,Susan A. Clancy,林雅代
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/08
- メディア: 文庫
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装丁が素敵すぎて、こういうのが好きな人はそれだけで買いの本(笑)
が、エイリアンに誘拐された人の本では無く、エイリアンに誘拐されたと思っている人の本なのです。
よく「24人のビリー・ミリガン」以後、多重人格になる患者が増えた、なんて話を聞きますが、
エイリアン・アブダクティーもヒル夫妻を扱ったテレビ番組が放送された後、爆発的に報告が増えたそうです。
興味深いのはエイリアンに誘拐されたという「記憶」を持っている人は、偽りの記憶を作り出す傾向が高いという
実験結果(たとえば「砂糖」「キャンディ」「すっぱい」「苦い」等の単語を被験者に憶えてもらうと、被験者はリストに載っていない言葉「甘い」を”記憶”していたりするような)が出るという事。
このことから著者はアブタクティーは嘘を付いている訳では無く、耐え難い不可思議な体験(睡眠麻痺…金縛りの方が解りやすいか、とか孤独感とか、性的な不調とか)に説明をつけるために偽りの記憶を作り出しているのではないか、と推論しているわけです。
さすがに俺自身はエイリアンにさらわれた経験のある人にお目にかかった事は無いのですが、
何だかケンカになったんだけど、相手が何に対して怒っているのか解らない、って事はあるぞ!
その人の中では俺とは全然違うお話が進行してたりするのかなー?
などと考えると面白いですね。
いや、言いがかりは困るが
そして話は何故、不安を解消するための説明が宇宙人などという陳腐で不気味な小道具でなければならなかったのか、という所にたどり着くのですが、この辺が一番興味深いところなのに、あっさり問題提起だけして幕を下ろしちゃうような終わり方なのが物足りないところ。
まあ、心理学者としてはあんまり踏み込めない領域、なのでしょうか。
しかし、自分を納得させるためにお話を作り出して信じ込んじゃう、というのは当の心理学会にも言えそうな話で、ナニをどうしたらこういう結果になる、と言うような症例が100あったとして、
「どうしたらこういう結果になったのは○○だから」の部分は解釈の仕様でいくらでも書き換えのきく分野だという気がしちゃうんだよね、門外漢としては。
心理分析自体がおはなしを作る遊び、って印象強いし
一応、巻末には多くの参考文献の注が付いていますが、普通の読者は大多数を占める英題だけの注をイチイチ検証したりはしないだろう?俺はしない。
そういう意味では、催眠による記憶の回復という治療法を心理学会は認めていない、という本書の前提でさえ無責任な読者の俺にとっては、この本の中だけの設定に過ぎないとも言える。
しかし、それを認めると欠落感をかかえた人を宗教家が洗脳するのって思ったよりずっと簡単な事なのかもしれない。
ところで
ロバートは、アブタクティーに対するわたしの先入観を打ち砕いた。彼は、わたしが考えていたどのタイプにもあてはまらなかった。子供のころ<ダンジョンズ&ドラゴンズ>で遊んでいなかったし、コンピューター・プログラマーやSFマニアではないし、『スター・トレック』のファンの集まりに参加したこともなかった。
ってもの凄くオタクに厳しい視線を持った先生だわ。
SFマニアなんてみんな××くらいに思ってやがる。
でも
地球外生物の話に興味を持っている人が集まるインターネットのチャットルームで、ジョーはある女性と知り合いになり、デートをするようになった。
なんて事例を読むと宇宙人に誘拐されるのも悪くないなぁ…と思わなくもない(笑)
俺も一度金縛りに遭ったことがあるんだけど、体が動かない!と思って目を覚ますと胸の上に飼っていたぬこたんが寝てただけだったよ。
猫型宇宙人?